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講談寄席として、150年の歴史を越え、今も変わらず在り続ける「本牧亭」。伝統的なこの場所で、今日も張り扇を叩く5人の講談師にスポットを当てて、それぞれの目線で講談の世界を読み解いてもらった。

第5回  宝井  琴調   氏 バックナンバーを見る

宝井琴調氏
昭和49年に尊敬する五代目宝井馬琴に入門。
長い時間、講談に携わってきた琴調氏の講談は味があり、見る人聞く人を魅了する。
一度は味わいたい空間。ぜひご拝聴あれ!!

講談師になろうと思ったきっかけは?

環境的に家族が講談を好きだったので、色々聞いていました。
子供のときに私の師匠でもあります五代目宝井馬琴に出会って、すごい人だなと思い、できれば弟子になりたいと。
講談師になるというよりは、五代目宝井馬琴のそばにいたいという思いでしたね。
17歳のときに申し込んだんですけど、高校卒業してから来いということでしたので18歳で入門しました。
なられたときはどうでしたか?

ものすごい夢中で一生懸命でしたので・・・ただ入門が早すぎたなもうちょっと世間を知ってからの方が良かったかな。いやいや高校なんかに行かないで、中学卒業してすぐに入門すればよかったな。という両方の思いがありました。
ギャップはありましたか?

五代目宝井馬琴が本当に好きで入って、今で言うとリスペクトしていて。
はっと気がついたら師匠にも奥さんも子供もいるんだ、師匠も飯食って、女将さんに頭下げて普通の人なんだと。
当たり前なんですけどね。(笑)
神がかった人に見えていました。そういうギャップはありましたね。
講談に関しては、食べられるのか食べられないのか、どうやって生きているのかも知らずに入ったのでびっくりの毎日でした。
講談の魅力は?

ものすごく難しいんですけど、講談って色々な顔があるんですよ。
軍談もの、武芸もの、戦国武将、人情話など。
一つ一つすべてに魅力があって、演者の個性がどこで生きるのか。
言葉ひとつ、尺台と張扇ひとつでお客様にどうやって絵を浮かばせるか。その醍醐味ですね。
お客さまと通じることがあって、たまに「あんたの聞いていて絵が見えたよ」と言われるのはうれしいですね。
つらかった事は?

そうですね。講談ってすぐにはうまくなれないんですよ。ずっと下手の代表できたので。
うまくなれないのはつらいです。
下手なのはわかっていたんで、大丈夫でしたけど。
もうちょっとなんとかならないかなというのはいつでもありましたね。(笑)
生活はべつですよ。暮らし向きのつらさは別にして。
宝井琴調氏
失敗談は?

最初は空板といって、誰もいないところで高座にあげられるんですよ。
楽屋の準備などをすべてして練習するんです。
それで声がでてきたなというと、師匠がそろそろお客さまの前でやってみるかということになるんです。

先輩からは、「おまえは楽屋の仕事を一生懸命しているから高座にあがれるんだ。おまえなんか入場料に入ってないんだ。だから、楽屋の仕事を一生懸命しなければならないんだよ。」とよく言われていたんですよ。
ある日楽屋にだれもいなくて、高座にあがっていると電話がなっているのが聞こえてくるんです、だからお客さまがいるのに「お客さんちょっとすいません。今楽屋の電話がなっているんでちょっと待っていてください。」
と言って電話に出たんですけど、その電話の相手が先輩で「お客さまをほっといてどうすんだ」と怒られたり、
違う先輩には、「高座というのは大事なものなんだよ。何があっても高座っていうのを空にしてはいけないよ。」と言われたのである日、お客さまが3人の時があって、高座に上がっていたらおじいさんが急に倒れたんですよ、それでも気になりながらしゃべっていたんですけど。
他の二人のお客さまが救急車を呼んで連れて行ってくれたんです。そうしたらお客さまがいなくなってしまって、それでも一生懸命はなしていたら、先輩が来て
「なにやってんだよ。お前が気づいて動くんだよ。」と怒られたりとそんなことばっかりでしたよ。
ドジだったので。
うれしかった瞬間は?

あまりないな〜。(笑)
ある日、ご常連さんが楽屋に入ってきて、「今日から二つ目だったな」とお祝いをくれたんです。
ちゃんと観ていてくれたんだなとうれしかったですね。
お客さまにそうやって認められるのはうれしいですね。
前座・二つ目・真打での違いは?

前座は甘えがあるんですよ。開き直りともいいますけど。
二つ目は、羽織をもらえるんで、それなりのものをやらないといけない。でもそこまでいってない。
真打は、二つ目じゃない真打として見られる、でもそこまでいってない。
そのジレンマですよ。
それを感じていなきゃ駄目ですけどね。
それでみんな少しずつ上達していくんですから。
苦労は?

私の場合は、やみくもにやってるだけなんですよ。要領が良い人は、つぼがわかるんです。
吸収の仕方が上手。
私の場合は、がーとやって、長いことやって覚えてくる。不器用なんで。
でもその方が良かったかなと思います。
もがいたほうが遅くても、強く身になったのではないのかな。
アレンジは?

それができれば、話しがみえているということですね。
江戸や明治の話しをそのままやっても通用しないわけですから。
最初は、師匠や兄弟子から教わったことをやって。そのうちに自分のものにしていく。
アレンジはできなければだめですね。

講談にはせりふとト書きとあるんですよ。講談はト書きの魅力ってのもあるんです。ト書きを語りこんでいく。
私が二つ目、真打になるときは、時代的にト書きをなるたけなくしてせりふを多くする。
今はまたト書きを強くしているときでもあるんですけどね。
 
初めて講談を聞く方には?

とにかく一回来ただけで聞いたと思わないでほしいですね。
10回以上は・・・せめて5回は聞いてほしいですね。
講談は演者の個性が強くでますので、何回か来て演者の代わりようを観ていただくと面白いですよ。
宝井琴調氏
聞く側は?

ゆっくりと気張らずに流すつもりで聞いてもらうのがいいんじゃないですかね。
こういう世界もあるんだなと。カルチャーでもあるんでね。
寄席は耳学問と昔から言われていますから、聞くことによって、学ぶことも多いと思いますよ。
違う世界を覗く、安いタイムカプセルだと思って来て頂いて、そこから入っていただければと思います。
講談をさらによくしていくには?

もちろん、芸人の技量の底上げですよね。人数は増えてきているんで、形は変わってくるかもしれませんが、それはそれで。時代が変わっているんで。
人間の言葉で聞くわけですから、百人が百人それが良いっていうことはないですけど、人生のうち講談にふれあわないで、気づかずにいる人もいます。
その中に、講談が他の趣味よりいいと思う人がいると思うんですよ。こんないい自分にあう芸能があるんだなと。
現実に今までやってきて、そういう人に出会いましたしね。
全国の人に一言

今、世の中のテンポが速くなっている、疲れている人が多いのではないかと思います。
その点講談はゆったりと流れている、一回そういうものに身をゆだねてもらえば、気づくこともあるのではないかな。
人生にはそういうものも必要だと思います。
あんまり走りっぱなしだと疲れますからね、講談ってものに触れてみて、自分の生きているスピードを緩めてもらって。
それで何かを感じてもらって、また元気に走ってもらえればと思います。
<宝井琴調氏についてもっと詳しく知りたい方>

『講談協会』http://kodankyokai.com/

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