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講談寄席として、150年の歴史を越え、今も変わらず在り続ける「本牧亭」。伝統的なこの場所で、今日も張り扇を叩く5人の講談師にスポットを当てて、それぞれの目線で講談の世界を読み解いてもらった。

第4回  神田  すず   氏 バックナンバーを見る

神田すず氏
平成18年に神田すみれに入門し、現在は前座として勉強中。
下積み時代という厳しい今。一歩一歩確実に必死に進んでいる。
真打・二ッ目とは違った、前座という読者に一番近い視点を感じてください。

講談師になろうと思ったきっかけは?

若いころからよく落語の寄席にいっておりまして、そこで初めて講談を聞いてすごく面白かったんです。
その時の講談師が女性だったんですけど、女性でも話芸の世界でやっていけるんだと思ったのが大きかったです。

当時は会社勤めをしていましたので、まずは趣味からと思い、軽い気持ちで師匠のカルチャースクールに通い始めました。
そのうちに落語より講談を中心に聞きに行くようになりました。
日本史にも戦国武将にも、古典文学にもさほど興味も知識もなかったのですが、
それでも講談を聞いていると自分がその世界に引き込まれてゆく。
いくさの合戦場や、江戸の町、東海道、お城の中、遊廓、話に出てくるそれぞれの場面に放り込まれたような気分になるんです。
嫌な事も、明日の煩わしいことも、好きなことまで、話をきいているとみーんな忘れてしまうぐらい夢中になりまして・・・。私にとっては衝撃でした。
こんなにも人に楽しんでいただける仕事があるのであれば、私もやってみたいと思うようになりました。
講談の魅力とは?

私にとっての講談の魅力は、聞いていてその話に夢中になれることだと思います。
そういう気持ちって、小説を読んだり映画を観たりとか結構あると思うんですけど
講談の場合はたった一人でお客様をその世界に引き入れてしまう。

たった一人で世界を作れるということは、もし海が真っ二つに割れるくらいまかり間違うようなことがあったら、
最新の装備をしている戦闘機と、張扇しか持っていない私が、互角に戦えるかもしれない。
夢のような話ですが、私は講談にそんな希望を持っています。また演者としてもそういうところが魅力だと思います。
講談師になってよかった点は?

まだそんなに良い思いはしていないですよ。(笑)
この芸界の習慣で、師匠や先輩にご飯を食べさせて頂けるというのがありまして、本当にありがたいと思います。
前座なので収入はほとんど無いですし。
これで、もしご飯が食べれなかったら、続けていくのに色々考えなければいけませんから。
失敗談はありますか?

たくさんあります。先日も師匠の家の庭で雑草取りをしたのですが、植えてあったすみれの花を雑草と間違えて全部抜いてしまい、師匠に「私を殺すつもりなの!」と怒られました。
あとは夏になると師匠が怪談話をされるのですが、話の途中でおばけを出すんです。
そのおばけは弟子がやるんです。
師匠に「このセリフを言ったら出てきて」と言われるんですけど、
最初は出て行く度胸がなくて、心臓が口から飛び出そうになるくらい上がってしまい
師匠がきっかけのセリフを何回も言ってくれるんですけど、結局出ていけなくて・・・。終わった後に怒らました。
そして次になると、今日は出ていかなくてはまずい、とあせって早く出て行ってしまって、
「まだこれからなんだから!」と怒られたり・・・もう数え切れません。
初めて高座に上がった時はどうでしたか?

初めての高座は覚えていないですね。わけのわからないうちに「早く行って!」みたいな感じになって
バタバタしていたことしか覚えていないです。
教えられたこと練習したことをやって、ふわふわした感じでした。
緊張する間もなく、必死にやりました。
今の仕事はどういうことをしていますか?

うちの場合は、師匠に用事がある時に師匠の家にいったり、または出先にお手伝いに行ったりします。
毎日ではないですけど、月に半分ぐらいは行ってます。
その他は講談の定席などの寄席で、先生方の着物をたたんだり、お茶を出したりという下働きが仕事です。
この世界に入る前と入った後のギャップはありますか?

私の場合は、入る前に「前座になるには」みたいな本とかで結構勉強してから入ったので、こんなはずじゃなかったというのはほとんどありませんでした。
実際入ってみたら、わかっていたつもりでも今までの生活とは全然違って大変です。
周りの反応は?

まず講談を始めたんだって言うと、職業の話ではなくて、趣味の話だと思われます。
次に職業だと言うと、住宅公団とか思われて全然わかってもらえません。(涙)
でも一度でも見に来てくれると喜んでもらえます。
神田すず氏
きたかみ本牧亭にも参加されているようですが、どうですか?

きたかみ本牧亭は、みなさんとても親切で帰るときには名残惜しくなります。
お客様もとてもよく聞いてくださるんですよ。ありがたいです。
最初に行ったときは4日のうち1日だけだったんですけど、次に行った時に「久しぶりだね」と声をかけてくださって本当にうれしかったです。
普段練習はどのようにやっていますか?

練習は、歩きながらとか電車に乗りながらとか、家でも気がついたときにさらっています。
今「お富与三郎」という話を教えていただいているのですが、「ねぇ与三さん」というお富のセリフに色気がないと師匠に言われ、電車の中で声を出さずに「ねぇ与三さん」、「ねぇ与三さん」精一杯色っぽく稽古をしているうちに、実際に口出ていたようで、向かいの席でおじさんがニヤニヤしていました。

声を出して稽古をするときには、必ず戸をしっかり閉め切ってます。やっぱり恥ずかしいですから。でも外に聞こえていると思います。(笑)
 
今、練習中の演目はありますか?

今は、「お富与三郎」をネタ下ろししようと稽古中です。
月に一本はネタおろしをするように言われていますので、それを目標にやっています。
本牧亭で、第三日曜日に前座勉強会があるんですけど、そこでネタおろしをするように標準をあわせています。
神田すず氏
ネタおろしは緊張しますか?

緊張します。でも師匠から、特にネタおろしをするときは、テンションをあげてやりなさい。そうすると上がらず物語に集中できるようになると言われて、だいぶ緊張しなくなりました。
今後やりたい演目は?

たくさんあります!
講談界の決まりで前座はやってはいけないものがたくさんあるのです。当たり前のことなんですが、基本をやらなくてはならないということだと思います。
もし基本が出来るようになったら、義士伝や怪談もやってみたいですし、お裁きものとか道中付けとかいろいろやってみたいです。
今後どんな講談師になりたいですか?

まずは来て頂いたお客様に楽しんで帰っていただく事が一番だと思っています。
そして講談は伝統芸能なので、この世界に入れて頂いたからには、その伝統芸能を守っていく、その一人になりたいです。
その上で自分の個性や今の講談をベースに自分なりにどうやったらお客様に喜んで頂けるんだろうと考えて、多くの方に講談の面白さを味わって頂きたいです。
でも今はまだ前座なので、そんな先のこともわからないくらい必死でやっていくのが精一杯ですけど。(笑)
初めての方におすすめの演目は?

正直俥夫や白隠禅師などは初めての方でも楽しめると思います。
難しい言葉もありませんし、心温まるいいお話なんです。
本牧亭とは?

今、日本で唯一残っている講談のお席亭です。
女将さんには本当にお世話になっています。
本牧亭では、いろいろと勉強させていただいたり、ご飯を食べさせて頂いたり、とにかくお世話になっています。
講談がもっと良くなる為に、どういったことをしていきたいか?

まだまだ前座修行中なのでえらそうなことは言えないのですが、若い方達に講談を知っていただくのも必要だと思いますし、講談を楽しんでいただく取っ掛かりとして、伝統を踏襲しつつも、講談の難しそうだな〜というイメージを払拭して頂けるようなかるーい話もやってみたいです。
あと、講釈場に来たらもれなく非日常が楽しめるっていうのも売りになるのではないかと思うんですが・・・。でも人にそんな話をすると、私のように考えるのは少数派だっていわれるんです。まずは自分を知ることが必要なのかもしれません。
全国の人に一言

講談は生で聞いて頂くのが一番です!
CDとかテレビも面白いですが、生はさらに格別で、ぐーーーーんと面白いです!
ぜひぜひ一度足をお運び下さればと思います。
<神田すず氏についてもっと詳しく知りたい方>

『講談協会』http://kodankyokai.com/

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