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講談寄席として、150年の歴史を越え、今も変わらず在り続ける「本牧亭」。伝統的なこの場所で、今日も張り扇を叩く5人の講談師にスポットを当てて、それぞれの目線で講談の世界を読み解いてもらった。

第3回  一龍齋  貞橘   氏 バックナンバーを見る

4月に真打昇進。今、最も熱い講談師に注目。

一龍齋貞橘氏
平成12年に人間国宝 一龍斎貞水の弟子となり、現在二ッ目の講談師。
苦しい修行時代の経験と宴席で鍛えたその講談は、元気で、明るくおもしろい。
真打に向かって突っ走り、日々精進している一龍斎貞橘氏をこのインタビューで感じて下さい。

講談師になろうと思ったきっかけは?

私は、日本大学芸術学部に通っていたんですが、そのときに、面白そうなものがあるなと思って見に行ったんですよ。
二十歳のときに、これだと思って始めました。
つてがあって入門する方もいますけど、私にはつてがなかったので、師匠の家に行ってピンポンと。それで、話を聞いてもらって、やるかみたいになり、名前をもらいました。
試験みたいなものは何もなかったですね。
修行ですから、嫌なこともたくさんありましたが、良いこともありますね。大体、半々ぐらいじゃないですか。
でも、今もやってこれているのはありがたいことですよ。
講談の魅力とは?

1人でやるというところですかね。1人で座って釈台たたいて、それが一番の魅力です。
舌先三寸で世の中を渡り歩いてく、かっこいいと言われたら、どんなに楽しいか。実際は、なかなか難しいですけどね。
また、1人で何百人という人の前で座ってやっている。
ライブとかに行くと、照明や音もありますしやってる方も見てるほうも立ってるでしょ。
我々は、やっている方も座っていますし、落ちついた感じがいいですね。
講談師になって一番きつかったのは?

それはちょっと言えないですね。(笑)
前座のときはやっぱりね。身分制度ですからこの世界は。何にもないからしょうがないですよね。
仕事もない、芸もない、お金もない、女もいない、もう大変でしたよ。(笑)
講談しかなかったですね。それでも、今思うと楽しかったのかな。
やっている時は、この先大丈夫かなと不安はありましたけど。ご飯が食べれなかったこともありましたし。
いつも本牧亭で食べさせてもらってましたよ。
失敗談はありますか?

師匠に掃除をやれって言われて、畳に水こぼして、障子に穴あけて「お前が掃除をすると汚れてしょうがない」なんてよく言われていました。
入門する前は、お茶なんて入れたこともなかったですから。でも、覚えていいことですからね。
うちの師匠は、そういうのを大事にしていましたよ。
住み込みではなかったので、師匠の用事に合わせていくんですけど、「電話とかしないで。察して来い」なんて言われていましたから、師匠が早く来てほしいときに遅く行ったりなんてしょっちゅうありましたよ。
初めて高座に上がった時はどうでしたか?

一番受けましたね。
師匠の会の前座で上がらせて頂いたんですけど、めちゃくちゃ緊張しましたね。自分で幕をあげて、出なくてはいけないし。
師匠に始まる前に、「初高座なんだからちゃんとあいさつしろ」と言われたんで、「初高座でございます。よろしくお願いします。」なんて言ったら、お客さんが「おー」「頑張れー」と声をかけてくださって。
あれは、忘れられないですね。"見方が原(みかたがはら)"の本を読んでるだけなんですけど。
まあ、緊張しましたね。今でも緊張しますが。
講談師になってよかったと思う瞬間は?

自分なりに今日は良くやったかなと思えて、お客さんが喜んでくれれば。
終わった後に、声をかけてくださったりはうれしいですね。おいしいお酒も飲めますし。(笑)
着物を着れた時も、うれしかったですね。師匠の教えに「着物を着れる喜びだ」というのもありますし。
二ッ目になると、紋付、はおり、はかまが許されるんですよ。
二ッ目になって、ご祝儀を頂いてそれで黒紋付をつくって、それを着た瞬間は、本当にうれしかったですね。

湯島天満宮にうちの師匠が立てた「講談高座発祥の地」の記念碑があって除幕式に参加させて頂いたんですけど、そのときに、カラスの糞がバチャって、初めての黒紋付についたんですよ。
みんなには、「うんが付いた」って言われましたけど、私はそれどころじゃなかったですね。(笑)
どういった演目に取り組んでいきたいか?

まずは「講談では修羅場だ」と師匠に教わっていますし、むかしは、見方が原、武芸もの、世話物という順番でやるみたいのがあったんですけど。
私は、荒木又右衛門(あらきまたえもん)とか、義士や侍が出てくるものが好きですね。
新作は、いずれは取り組みたいと思っているんですけど。構造とかは練っています。
古典をしっかりとできてが最初。その後に新作をやると古典がもっとよくなる。まあ、両方やっていかなければいけないですね。
何ができるかを模索していく作業。どういうネタが自分に一番あっているか、合っていないかなどを探していきたいですね。
どういった講談師になりたいですか?

来てくれたお客さんに喜んでもらえるのが一番ですからね。
講談の魅力を伝えて、なるべくシンプルにやっていく、そんな講談師になりたいですね。
一龍齋貞橘氏
ネタの練習はいつ行っていますか?

家や歩きながらとかですかね。家でやっていても飽きてしまうんですよ。(笑)
歩きながらぶつぶつと。なるべく声を出すようにと言われていますので、修羅場読みは、ほぼ毎日やっていますね。
師匠に聞いて頂いて稽古をつけていただいたり、昔の速記本やテープとか。
落語と違って地の文が多いので、人がやっている通りにやるとおかしいんですよ。
講談はそれぞれが作るんで、人によって色が出やすいんです。
自分らしい色は?

元気いっぱいに、若々しく、明るいほうがいいですね。
うちの師匠の教えに「らしくしろ、ぶるな」ってのがありまして、上の方がやっているものを、いいなと思ってそのままやってもできない。変に収まっているのもおかしいですしね。
 
はじめて講談を聞く方に、お勧めの演目は?

講談は、難しいのとわかりやすいのとありますから。
講釈場にいくと何人かがやるので、軍団、義士伝、泥棒、怪談とかいくつも聞いて頂ければ、合うのがありますよ。まずは、それから初めて頂くのがお勧めですね。

町のおでんやみたいなものですよ。
常連がいっぱいいて、入りにくいなみたいな、でも、一回勇気を振り絞って入れば、おじちゃんなんかも仲良くしてくれる、そんな所だと思います。
一龍齋貞橘氏
どういう感じで聞いてほしいですか?

気軽に聞いてほしいですね。聞いててわからないところとかを考えてはいけない。
難しいところは、言ってる本人もたいしてわかっていないんじゃ、みたいに思って聞いて頂ければ。
どんなもんかなって気楽に聞いておもしろかったら、また来て頂いて、つまらなかったら、次は面白いんじゃないかな?と思って来て頂ければ。(笑)
本牧亭とは?

私は、本牧亭に一番お世話になっている講談師ですね。
うちの師匠の所に行って、その帰りにいつも本牧亭に来て、稽古して、お客さんの前でやらせてもらったり、ご飯食べて。また、色々なお客さんが来るのでいい勉強になりましたね。
本牧亭がなければ今はないですね。
本牧亭に来る方は、高座をわかっているお客さんが多いですから。ある意味ありがたい、ある意味怖いお客さんですね。新鋭講談とかができているのも、ここだけですからね。
講談師にとってなくてはならないところだと思います。
講談がもっとこうなったら良いと思うことは?

最近は、講談をやる方も若い方が増えてきているし、若いお客さんがきてもわかりやすい。
そういう世代にアプローチは必要ですね。
全国の人に一言

本当に敷居が高くないし、そんなに堅苦しくもないので、興味があったら一回足を運んでください。
来て頂いて面白いなと思っていただければ、ありがたいですし。
また、講談協会が渋谷のお寺で会を始めるので、みなさん是非足を運んで下さい。
<一龍齋貞橘氏についてもっと詳しく知りたい方>

『講談協会』http://kodankyokai.com/

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