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講談寄席として、150年の歴史を越え、今も変わらず在り続ける「本牧亭」。伝統的なこの場所で、今日も張り扇を叩く5人の講談師にスポットを当てて、それぞれの目線で講談の世界を読み解いてもらった。

第2回  田辺  一邑    氏 バックナンバーを見る

4月に真打昇進。今、最も熱い講談師に注目。

田辺一鶴に入門し、豊富な語彙と巧みな緩急で、ジャズの即興演奏の如く聴衆を魅了する講談。
ロサンゼルスでの"口演"、NHK文化センター「江戸祭事を行く」講師、江戸文化歴史検定2級取得など精力的な活動と、入門以来、本牧亭で鍛え上げられた講談で真打昇進。
今もっとも注目されている講談師。

講談師になろうと思ったきっかけは?

生まれが地方なので、子供の頃は全然講談にかかわりがなかったんですよ。
会社勤めをやめてから、何をしようかなと考えていた時期に色々なものを見てみようと思い、講談の招待券を応募して、本牧亭で聞いたのが講談と出会ったきっかけです。
元々、声を出すのが好きで学生時代も演劇部でしたし、朗読のワークショップとかもやっていました。それに、着物も好きなんですよ。
ボーナスで着物を買ったりもしていましたね。
着物を着て声を出す。その二つが一致して、「ひょっとしたら私にもできるかも知れない」と思って入門しました。
また、運動音痴なんで、体を使うのはダメで、声だけでいろいろ表現できるところにも魅力を感じたのではないですかね。
初めて講談を聞いた時の感想は?

普通の定席だったんですよ。ああ、こういう世界もあるんだなと。
2つ目は、史実を元にやっている前提があるので、歴史的ロマンがある。
それまでは知らなかったので。衝撃というか、やってみたいなという気持ちが芽生えましたね。
講談の魅力とは?

やはり、「一人で登場人物をやる。すべてを表現していく。」それが魅力の一つですね。
生がやっぱり良いですね。迫力といいますか、気持ちが伝わります。
講談って、表現が多分に音楽的なんですよ。リズム・強弱・緩急だったり。
そこが、落語とは違うところですね。
講談師になって辛かった事とは?

私、嫌なことはすぐ忘れるようにしてるんですよね。(笑)
会社勤めを十年くらいして、その後にこちらの世界に入りましたので、初めからこちらの世界にいる方とでは、初めのうち価値観が少し違ったんですよ。
その違いに少し悩んだりすることもありましたが。
失敗談はありますか?

前座のときなんかは、高座に上がって頭が真っ白になって何も出てこなくなると、修羅場をお客さんが教えてくれる。なんてこともありましたね。
他にも、古いものなのにぱっと現代の言葉が出て来てしまう、なんてこともありました。
得意とされる演目は?

ちょっとでも自分の思いをこめられるようなものがすきなんでしょうね。
母子の純愛もの、悪女ものがわりと得意ですね。
よく対照的と言われるんですけど、自分ではそんな感じはしないですね。

子供の頃の私は、結構優等生だったんですよ。わがままもほとんど言わなかったですし。
母親にこう言われたかったみたいな、抑制された気持ちがあったのかな。
自分が子供の頃に満たされなかった思いを、子供になったつもりで表現しているのが、母子もの。
悪女ものは、根本的に男が嫌いなのかもしれません。(笑)
古典については、今、本牧亭でずっと連続でやっているんですけど、「妲妃のお百(だっきのおひゃく)」は好きですね。
ネタはいつ考えていますか?

いつも考えているといえば考えていますし、環境を整えてというのはないですね。
夜中にやるのが多いですね。宵っ張りの朝寝坊なんで、朝は苦手です。(笑)
新聞なんか見ていて、ちょっと気になる記事がのってたりすると、それに触発されて作ったりしますね。
一回書いても、棒線引いたり書き直したりで、ぐしゃぐしゃになってしまうんですよ。(笑)
最近はパソコンで書く方も多いんですが、私は手書き派ですね。

最近気になることがあるんですが、縦書きの文化が少なくなってきてると思うんです。
驚いたのは、今年の大河ドラマのタイトルクレジットが横書きになっていたことですね。
いろいろな背景があってのことなのかもしれませんが、縦書きは、これからも守っていきたい大切な文化だ、と私は思います。
ネタを書く手法みたいなものはありますか?

田辺派の十八番に「道中付け」というのがあるんですよ。
道中付けとは、どこどこを出発して、どこどこに着きました。
その間の道中、産物とか、観光地を入れて通っていく道筋をつくっていくんです。
師匠が得意で、私も好きなんですよ。
田辺一邑氏
わりと古典文学にもあって、平家物語なんかを読んでも道中付けで書いてあるところもあります。
日本の古典文学の伝統の一つだと思います。
また、なるべく同じ言葉を何度も使わないように、言葉を選んで作っていますね。それは鉄則みたいな感じです。
同じ言葉を重複していうんじゃなくて、表現のバリエーションですかね。
どうやって練習してたんですか?

伝統芸能の世界は、どこもそうだと思いますが、発声だけの練習というのはないんですよ。
最初からネタをやる。それがイコール発声練習にもなるし、入ったばかりの人がやるのと、何年もキャリアを積んだ大看板がやるのとは、味が違う。
そういったことを感じられる、OJTみたいなものですね。
三、四ヶ月見習い期間が終わると、前座になります。
お茶汲んだり、叱られたりしながら、まがいなりにも高座にあがってやる。
前座になった段階からやれる、そこがお芝居なんかとこちらの世界との違うところですかね。
オーディションがあるわけでもないですし、師匠に入門したからって、授業料をはらったりもしないです。
はじめて講談を聞く方に、お勧めの演目は?

私が、まだ入門する前に聞いた内容でいいなと思ったのは、これからの季節ですと秋色桜(しゅうしきざくら)、徂徠豆腐(そらいどうふ)は好きですね。
そういうお話は入りやすいと思います。
 
本牧亭とは?

講談の定席として本牧亭は歴史があるもので、本牧亭でやるっていうのは、それなりのことなんです。
講談らしい講談をやる場所、それが本牧亭と私はとらえています。
講釈師のホームグラウンドみたいな意味もありますし。
   田辺一邑氏
講談がもっとこうなったら良いと思うことは?

今、落語は、ブームを通り超えて一つのカルチャーとして確立し、いろいろなところからもよく取り上げられています。
昔はよく、落語を卒業すると講談にくる、といわれていたらしいんですけど。

講談は、若い方があまり足を運ばれていないので、若い方にアピールし、来て頂ければいいと思っていますね。
また、現在は、社会のモラル低下がささやかれています。
講談は、道徳教育、親孝行、忠義みたいな話が多いので、正面から真っ向勝負して社会のモラルを守っていく。そういう役割を担いたいと思っています。
全国の人に一言

私が常々思っていることは、自分の中にたくさん言葉を蓄積して、それを高座で思いっきり出したい。
いわゆる、ジャズの即興ライブみたいな、そういう講談を目指してやっていきたいと思っています。
4月4日、5日に本牧亭にて、真打披露興行を行いますので、是非お運び下さい。
<田辺一邑氏についてもっと詳しく知りたい方>

『講談師 田辺一邑公式ホームページ』 http://www.tanabe-ichiyu.com/
『講談協会』http://kodankyokai.com/

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